講師登録
コラム一覧へ戻る

<陰ヨガが導いてくれた道>

少し難しいお話になるかもしれませんが、哲学として陰陽思想を追求していく過程で、私は易経にたどり着きました。また、陰陽といった概念は出てきませんが、心の迷妄を断つための仏教(チベット仏教)と瞑想にも同時期に出会いました。“身体のヨガ”が、本格的に“修身のヨガ”に変わったのがこの時期だと思います。2016年秋頃のことです。

二元性を超えること

易経の解釈は師により違うと思いますが、陰陽の両極を識別し、分別をつけた上で、調和を目指し、陰陽といった二極(または二元性)を超えていくところに奥義があります。

私たちの散漫な雑念は、「私のヨガが正しい。」「私にはこのヨガが合っている。」「あのヨガはもう古い。」といった決めつけをしがちですが、それは自我を増殖しているだけ。本来のヨガは自我を割っていく作業なのだから、そうなってしまっては本末転倒です。

座る瞑想(シャマタ・ヴィパッサナ瞑想)の実践は、概念的思考、先入観、固定観念、物事の良し悪しの評価など、散漫な思考のおしゃべりや雑念をどんどん解いていくプロセスです。これは、自分の心と繋がるためのステップです。このプロセスにおいて最も大事なことは、“静寂さ”を身につけることです。つまり、忙しく散漫に思考が動いている間は、自分の心のことはわからないのです。「自分のことはよくわかっている。こういうわけで、こういう人間なのだ!」と理論武装で自分を分析している人もいるかもしれませんが、仏教の観点からは、これこそ無知の極まりです。本質的に心に触れることができるのは、二元性をつくりだす思考のない領域に触れられるときだけだからです。残念ながら、この境地は体感でしか感じることができません。だから、瞑想というプラクティス方法があるのです。

瞑想への架け橋である陰ヨガ

陰陽思想のお話に戻ります。陰ヨガは、瞑想への架け橋になると感じています。まず身体を休めて、静止をします。身体が休息の質を感じることができれば、心も静寂さを取り戻します。
意識を身体と呼吸に向けて、静かにポーズをとることで、身体の気の流れや様子が変わります。慣れてくると、心の落ち着きと平穏さも取り戻していく過程がよく観察できるようになります。陰ヨガを普段からプラクティスする生徒さんが、瞑想に入りやすいと感じるのはこれが理由だと思います。
さらに、身体の奥深くの変化も静かに観察できるようになってくると、身体が動作をしていていも(例えば、陽ヨガで動いていても)、平静さを保ちながら冷静に身体と繋がることができるようになります。

陰ヨガを教えるティーチャーによっては、陰ヨガプラクティスに陽の要素をかなり取り入れている方もいます。特に、西洋人にその傾向が見られると感じていますが、陰陽思想に忠実にとことん陰へ向かう陰ヨガをするならば、陽の要素を減らしていくことこそがキーポイントだと私は思っています。何故なら、何もしない状態の静寂さこそが瞑想へ、そしてサマディに導く最初の条件だからです。

といっても、陽の要素が多い陰ヨガを否定しているわけではありません。身体中心のヨガなのか、心や精神についての学びも取り入れるのか、どこに目線を合わせているかの違いです。盲目的に指導者の言うことを聞くのではなく、受講する側が相応のリテラシーを持っていれば問題はないと思います。

中医学(養生法)の先にある精神のこと

陰陽思想を生活レベルに落とし込む養生法を説く中医学は、五行説をベースとしています。シンプルにいうと、五行説とは、陰陽を5つの気の違いや変化に分解して説明したものです。 五行説では、まず、身体の養生法として、五臓(肝・心・脾・肺・腎)の健康を守ることをします。例えば、冬は腎の気を補うために睡眠をしっかり取りましょう!といった具合に。また、人は感情を宿していると考えて、七情(怒・喜・思・悲・憂・恐・驚)の調和を計ります。例えば、「肝」が宿している「怒」(イライラやストレスを含む)が炎上しないようにリラックスをしよう!という感じです。

さらに、五臓は5つの精神(魂・神・意・魄・志)を宿しているという点もポイントです。実は、この領域を理解するには、前述の“静寂さ”が必要であり、そのために瞑想することが推奨されています。(『Power of the Five Elements』by Charls A. Moss, MDより)。“ボディ・マインド・ソウル“だとか、”身・心・神“というフレーズを聞いたことがある人もいるでしょう。3つ目の精神レベルを体感するには、まず心も身体も平静さを保てるようになることが必須なのです。

私たちの生活を支える中医学ですが、もっと深く突き詰めて視野を開いていくと、精神の部分にたどり着いていきます。ヨガの道は、身体の在り方から、心の在り方、さらには人生をどう生きていくのかといったことに繋がっていきます。その道を歩むためにも、自分のヨガに陰ヨガを取り入れていくことは、とても意味のあることだと感じます。

  • *Junostyleは、全米ヨガアライアンス認定スクールです。RYT200とRYT500の両資格の取得が可能であり、ヨガから瞑想までトータルで学べるヨガスクールです。特に、陰ヨガがメインとなりますが、ヨガを通して精神や心の質を高めることに注力しています。(詳細は>>>こちら
  • *過去のワークショップを一定期間視聴できます。見逃した方、まとめて学習やプラクティスをしたい方におすすめです。詳細等は、オンデマンド〈見逃し配信〉をご覧ください。

若林純子

株式会社ジュノスタイル代表取締役。陰(いん)ヨガ指導者。
Junostyle~自分らしい自然なライフスタイルを探す旅~というコンセプトのもと、陰ヨガ、アロマセラピー、食を通して「陰(いん)のあるライフスタイル」を提案。
とくに、女性のライフスタイルのバランスを追求し、日本全国やアジアで陰ヨガのワークショップを行っている。講師養成にも積極的に取り組んでいる。
全米ヨガアライアンス認定講師・英国IFA認定アロマセラピスト。
若林純子のブログ:https://junostyle.jp/ownerblog/